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咳に関する豆知識
(1)2週間続く咳は結核、ぜんそく、肺がん、逆流性食道炎、副鼻腔炎を疑いましょう。(胸部レントゲン、副鼻腔レントゲン、血液、痰の検査、胃カメラ。胸部CTなどの検査が必要になります。)
(2)微熱と咳が続く場合は、マイコプラズマ感染症も考慮しマクロライド系抗生物質、(ニューキノロン系でも)を内服しましょう。セフェム系抗生物質では効きません。
(3)「咳と胸の痛み」があり、「熱」があれば肺炎。「息を大きく吸ったときに痛い」場合は肋骨骨折を疑います。(特に女性に多い)
(4)「1日中出る咳」は「風邪」。「夜から朝にかけてひどくなる咳」は「喘息」の治療をしましょう。
お化けとウイルスはなぜ怖い?の話
お化けが、いつ?どこで?どんなふうに?出てくるかわからなければ、怖さが何十倍にもふくらむもの。逆に、丑三つ時に柳の下や井戸の中から出てくると分かっていれば、丑三つ時に柳の下や井戸に近寄らなければお化けを怖がる必要はありません。。
同じようにウイルスの特徴を知っていれば「むやみやたらな怖がり」はなくて済みます。その知って得する特徴は。。。。
①ウイルスは自分一人では増えることはできない。
②ウイルスは皮膚から入れない。
③飛沫感染は重いもの
④ウイルスはすぐに宿主細胞に入れない?
です。
①ウイルスは自分一人では増えることはできない
ウイルスは決して自分一人では増える(増殖する)ことはできません。動物の細胞(宿主)の細胞に侵入して初めて増え、その能力(悪さ)を発揮できます。動物(人)から動物(人)へ移ることがなければいずれウイルスは宿主とともに消滅します。
②ウイルスは皮膚からは(宿主細胞に)入れない。:通常ウイルスは皮膚からは入れません。目、鼻、口、肺などの粘膜から侵入します。ウイルスを吸い込んだり、ウイルスのついた手で目、鼻、口を触わるから感染するのです!!(手洗い、うがい、マスク、眼鏡などが重要)
③飛沫感染は重いもの:飛沫感染には重さがあります。つまり重力で下に落ちます。いつまでもその辺の空気中にいるわけではありません。また通常、1個や2個のウイルスが入ったぐらいでは感染しません。
目の前でくしゃみ、咳をされても離れていれば(ソーシャルディスタンス+1mがおすすめ)、重力で下に落ち、飛沫のほとんどが目、鼻、口の高さには届きません。飛沫はどんどん下に落ちていきますので、できるだけ息を止めているだけでも(30秒がおすすめ)ウイルスに感染する可能性が低くなります。。(ウイルスはすぐに宿主細胞には入れない:ウイルスが宿主細胞に入るには宿主細胞側の手助けが必要で、ウイルスだけでは侵入できません。宿主側の手助けは種別、ウイルスの種類ごとに違いますので、通常、人間の風邪は犬にはうつらない!!のです)。
またウイルスが細胞に入り込むのに数時間かかるといわれます。ですから入り込む前に、水で洗い流せばOKなのです。
ちなみに今騒がれているコロナウイルスはウイルスの表面にあるトゲ(S蛋白)と人の(宿主)細胞の侵入を手助けする手(ACE2受容体)が結合して初めて侵入することができます。(ACE2受容体がなければ宿主細胞に侵入できません。今回ねこもコロナにかかるということは猫の細胞にもACE2受容体があるということになります)
「むやみやたらに怖がり、やみくもに騒ぐ!」、ことはしないで「相手を知り適度に怖がる」「油断しない」ことが重要です。
運動誘発喘息(EIA)
運動により喘息発作が起こる病態をいう。
喘息がうまくコントロールできていない患者で、激しい運動を持続する場合や冷たく乾燥した環境でおこりやすい。
1:EIAの病態
運動時の換気増大による気道の冷却(heat loss)と水分喪失(water loss)に伴う気道上皮の浸透圧の上昇が原因?
2:予防
(1)十分なウォーミングアップ。
ウォーミングアップで軽いEIAを生じさせておくと、目的とする運動でのEIAが軽くなる。
(2)喘息の治療薬を飲んでおく。
(3)マスクをする。
(4)喘息を誘発する食事は控える。
(5)十分な水分と休養をとっておく。
3:運動誘発喘息が起こったら
運動を停止し、腹式呼吸喘息治療薬を使う。
4:こんなときは病院へ
5~10分腹式呼吸をしても楽にならない。
呼吸困難が強い場合(強い陥没呼吸、切れ切れにしか会話できない、チアノーゼなど)
過換気症候群
ストレスなどにより、呼吸が速く浅くなったときにおこる、さまざまな症状。
1:症状
空気飢餓感、呼吸困難、死への恐怖感
これらが症状を悪化させる。以下の症状
めまい、意識混濁、失神、けいれん、手足がつる・突っ張る、テタニー型全身性筋強直、手足のしびれ
2:症状が起こったらどうするか
まず、落ち着かせること。
必ず呼吸はできる、死ぬことはないことを伝える。紙袋を口に当てゆっくり呼吸させる。
3:こんなときは病院へ
特に医療機関に行かなくても大丈夫な場合が多い。症状が軽快しない場合は内科へ、
繰り返す場合は内科あるいは心療内科へ。
タバコの害、禁煙について
「百害あって一利なし」のタバコ。肺がんのリスクは吸わない人の13倍。受動喫煙者(吸っている周りの人)も発がんが1.5倍になるといわれています。また換気扇の前で吸っても子供の尿からニコチンが通常の10倍検出され、ベランダで吸っても2倍になります。
2008年のアメリカの報告では、喫煙者はたばこを吸わない人に比べ大腸がん特に直腸がんの発生が多く、死亡率も高かったとのことです。タバコの害は呼吸器だけでなく、消化器系のがんにも関与しているようです。
また1mgの低タールならいいやと甘い考えの方。1mgでも高タールのタバコでも発がん率は変わりません。
禁煙外来受診の勧め:
禁煙補助薬は飲み薬、貼り薬、ガムがあり、禁煙外来を標榜している医療機関を受診すると、それらの薬が3割の自己負担(保険適用)でもらえます。(当院は禁煙外来を標榜していません。。)
引用元:喫煙の健康影響に関する検討会報告書(案),厚生労働省,5.大腸がん,(2)国際的な評価のまとめ
(https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10901000-Kenkoukyoku-Soumuka/0000105624_1.pdf)
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気圧の変化と病気の話
台風シーズンになると喘息がある人は症状がひどくなる人が多く、特に台風や気圧の谷が接近あるいは去っていくときに、喘息発作がでたりします。これは気圧の変化により引き起こされる現象。
また胸部や腹部の手術後の人は気圧が変化すると古傷がうずき、脳に障害がある人はこうしたときに頭痛がするようです。体とはいかに繊細かの証明ですね。
喘息といえば、人間の呼吸機能は通常、朝方低下していますので、特に朝方喘息発作がひどくなります。そこに気圧の変化が加わるとよけい喘息発作が引き起こされやすくなります。
繰り返しますが、夜息苦しい人は朝方もっと悪化する場合が多く、なるべく早い段階の処置が必要となります。横浜市民病院の救急外来当直を以前していた時、朝5時から6時の間の小児の喘息が多いこと多いこと。。それから寝ずに次の日も夜まで仕事のつらいことつらいこと。。。
当直医にとって夜の12時なんてまだ宵の口。喘息の人は日が変わらぬうちに救急外来に受診しましょう。なるべく早いうちの対処が必要です。